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EMIフィルター・コンポーネント:その実態と機能

2022年8月2日、Bruce Rose著 - 10分の閲読

EMIフィルター・コンポーネント:その実態と機能

概要

プロジェクトで、内部AC-DCおよびDC-DC電源を選択する必要が出てきたとします。前回のプロジェクトでは、内部EMIおよびEMCコンポーネントを含む電源を選択しましたが、このプロジェクトでは、検討している電源には外部EMIおよびEMCコンポーネントが必要です。このディスカッションでは、なぜ異なるコンポーネントが必要なのか、どのように選択すべきかを理解するのに役立ちます。EMIやEMCの詳細については取り上げませんが、基本的な概念は「他のシステムに危害を与えないこと」であり、「外部の電気障害がある場合に適切に動作すること」です。EMIとEMCの詳細の議論については、このウェブページをご覧ください:電源におけるEMIとEMCの間の違いは何ですか?

電源のブロック図

図1にある電源のブロック図は、前のウェブ記事「スイッチモード電源が機能する仕組み(ブロックごとの解説)」で説明されており、この議論の基盤として使用されます。

図1:AC-DCスイッチング電源の簡略化されたブロック図
図1:AC-DCスイッチング電源の簡略化されたブロック図

上の図では、EMI/EMCフィルターは電源への入力でブロックとして示されています。実際には、以下の図2に示すように、EMI/EMCフィルターコンポーネントの一部は電源の入力に配置され、一部は電源の出力に配置され、一部は電源の入力と出力の間に配置されます。

EMI/EMCコンポーネントは、以下の機能を提供するために活用されることがあります。

  • 電源の入力または出力の放射および伝導ノイズを最小化する
  • 電源の入力または出力に印加される電圧トランジェントの影響を最小化する
  • 電源の入力に電圧が最初に印加されるときの、入力サージ電流を最小化する
  • 電源に障害が発生した場合に、入力電源と導線を保護する
図2:外部EMIおよびEMCコンポーネント
図2:外部EMIおよびEMCコンポーネント

回路保護コンポーネント

ヒューズ

ヒューズは、電源や電源に供給する導体を保護するために存在し、電源の入力と直列に配置されます。保護の理由から、ヒューズと上流電源からの導線との間にコンポーネントが存在してはなりません。このヒューズは、ヒューズが開いたときに電源に電圧が印加されないように、非接地入力端子と直列に配置する必要があります。下流電源に対する過剰な入力電流によって適切なサイズのヒューズが飛んだ場合、ヒューズ交換が必要になるだけでなく、下流電源がダメージを受け、修理や交換の必要が出てきます。ヒューズは、アプリケーションの電圧、電流、応答時間、動作温度に基づいて選択する必要があります。また、図3に示されているように、選択できるさまざまなパッケージオプションがあり、これによって設計をさらに最適化することができます。

図3:ヒューズ記号(左)と取付けスタイル(右)
図3:ヒューズ記号(左)と取付けスタイル(右)

酸化金属バリスタ(MOV)

酸化金属バリスタ(MOV)は、入力端子を横切って配置されており、これは入力電圧から発生するかもしれない電圧トランジェントを吸収するために使われます。AC-DC電源の場合、入力電圧源はAC電源の線であり、MOVは、落雷やその他のAC電力ネットワークへのダメージから過渡エネルギーを吸収するために必要とされることがあります。MOVコンポーネントは、通常動作中では高インピーダンスであり、入力過渡電圧が存在する場合と同様に、定格電圧を超過すると低インピーダンスになります。入力ヒューズは、常にMOVと入力電源の間に配置する必要があります。過渡入力電圧が原因でMOVが低インピーダンスになると、ヒューズが飛ぶことがあります。このMOVは、電源に印加される動作電圧と過渡エネルギーに基づいて選択する必要があります。MOVの代替となる保護コンポーネントには、Zener、TVS(過渡電圧抑制)ダイオード、またはGDT(ガス放電チューブ)があります。

図4:MOV記号(左)と電圧-電流関係(右)
図4:MOV記号(左)と電圧-電流関係(右)

入力サージ電流制限抵抗器

EMI/EMCコンポーネントの図でR1とラベル付けされた抵抗器は、AC-DC電源に適用され、AC電圧が最初に電源に印加された際の入力サージ電流を制限するために使用されます。入力サージ電流は、入力電圧が最初に印加されたときのバルクコンデンサの初期急速充電によるものです。電流制限抵抗器がない場合、入力サージ電流は、通常の動作電流より100倍も大きくなることがあります。電流制限抵抗器の値が高くなると、入力サージ電流が減少しますが、通常動作中に許容できない電力ロスが発生することがあります。入力サージ電流の抵抗器の構造を選択するときには注意が必要です。この抵抗器は、入力サージ電流が流れるときに高エネルギーバーストに耐えることができなければなりません。ワイヤー巻線構造の抵抗器は、入力サージ電流制限抵抗器によく適しています。フィルム構造の抵抗器は通常、大きな入力サージエネルギーを取り扱うのには適していません。

図5:入力サージ電流制限抵抗器
図5:入力サージ電流制限抵抗器

一部の設計では、入力サージ電流制限抵抗器に負の温度係数(NTC)の抵抗器が使用されます。このNTC抵抗器は、冷たい場合に抵抗値が高く、入力サージ電流を効果的に制限します。NTC抵抗器が加熱されると、入力電流の流れによって、抵抗値が下がり、そのため抵抗器によって関連電力損失も低下します。NTC抵抗器は、電源が遮断され入力電源が再投入される前に、クールダウンして高インピーダンス値に戻るのに十分な時間(数十秒)を許容する必要があります。多くのDC-DCコンバータアプリケーションでは、入力サージ電流制限抵抗器は必要ありません。入力サージ電流は、入力電圧が比較的低い場合(240Vacのピーク入力電圧が340V)、または入力電源のソースインピーダンスが最大入力電流を制限する場合、本質的に制限されます。

出力過渡電圧抑制

電源の出力にあるTVS(過渡電圧抑制)ダイオードは、2つの異なる目的で使用されています。電源の出力にTVSダイオードを使う一般的な理由は、電源の出力端子上の外部電源によって誘導される電圧トランジェントを分流させて電源を保護するこためです。MOVは電源の入力で同様の目的のためにしばしば使用されますが、電源の出力にかかる電圧と電源の出力で誘起された過渡電流に関連するエネルギーは両方とも多くの場合、入力よりも低いため、したがって、TVSダイオードがより適切なソリューションとなります。電源の出力喪失が発生した場合に出力電圧をクランプしたいという要望もある場合は、TVSダイオードの代わりにZenerダイオードを使用することができます。この状況では、Zenerダイオードによって消散される必要がある電力は、電源の出力電力定格よりも大きくなることもあることは留意してください。このZenerダイオードは、電源出力電圧よりも大きな破壊電圧を持ち、故障時には電源はおそらく定格出力電流よりも高い電流を供給できる可能性があります。

図6:TVS記号(左)と電圧-電流関係(右)
図6:TVS記号(左)と電圧-電流関係(右)

EMIフィルター・コンポーネント

差動モードチョーク

LDMとラベル付けされたインダクタは、入力電源パスと直列に配置されます。このコンポーネントは、入力コンデンサ、CXでローパスLCフィルタを形成し、入力導線上の望ましくない伝導ノイズ電圧を減衰して外部電源に到達しないようにします。このインダクタの飽和電流の仕様は、通常動作中に最大入力電流に耐えるのに十分な大きさでなければなりません。起動時の突入電流サージ中に、インダクタが飽和しても、これは問題ありません。作動モードのインダクタは、インダクタの電力消費が許容範囲内に収まるように、十分に低いDCR(寄生DC抵抗)をもったものを選択する必要があります。

図7:差動モードチョーク
図7:差動モードチョーク

コモンモード・チョーク

LCMというラベルの付いた二重巻線チョークは、入力のコモンモード・チョークです。コモンモード・チョークは、入力導線に沿って流れるコモンモード電流を減衰する高インピーダンスを生成する役割を果たします。コモンモード・チョークを回路図に配置するときは、「ドット」の向きが正しいことを確認してください。このドットは、一対の巻線の相対的な巻線方向を示します。ドットがコモンモード・チョークへの接続の入力か出力にあるかどうかは重要ではありませんが、両方のドットはチョークの同じ電気側になければなりません。作動モード・チョークは、ドット表記は不要で、巻線は1本のみで、電流の流れの方向は関係ありません。電源の通常動作中に最大電流に対応し、電源の通常動作中に許容できる範囲の電力損失となるようにする場合には、コモンモード・チョークを選択します。差動モード・チョークとは異なり、コモンモード・チョークはコモンモードで流れる電流が非常に少ないため、飽和電流定格は通常問題ではありません。

図8:コモンモード・チョーク
図8:コモンモード・チョーク

X安全クラスの入力コンデンサ

CXとラベル付けされたコンデンサは、入力の電力線を横切って配置され、外部電圧源にノイズが行かないように、差動伝導電圧ノイズを分流する役割を果たします。このコンデンサは、XまたはYの安全クラス構造である必要があります。XおよびY安全クラスのコンデンサは両方とも、AC入力ラインに直接接続されるように設計されているため、電圧サージが存在したとしてもそれに耐えることができます。静電容量の値が大きいほどインピーダンスが低くなり、望ましくないノイズをより良く分流できますが、AC-DC電源の入力漏れ電流も増加します。多くのAC電源システムは、規制基準を満たす必要があります。規制基準には、入力電源の最大漏出制限が含まれているため、分路コンデンサの静電容量を制限します。

図9 Xコンデンサ付き(上)およびなし(下)のEMI電流パス
図9:Xコンデンサ付き(上)およびなし(下)のEMI電流パス

Y安全クラス絶縁コンデンサ

コンデンサは、入力と出力の間に配置され、回路図でCY1とラベルされており、電源の出力のコモンモード電圧ノイズを減衰する役割を果たします。このコンデンサは絶縁バリアを横断しているため、安全クラスYが選択されます。安全クラスYのコンデンサは、回路がオープンとなると故障するように設計されているため、コンデンサが故障した場合に電源の入力から出力への絶縁の完全性が保たれます。一部のアプリケーションでは、電源の入力と出力の間の絶縁の完全性をさらに保証するために、2つのコンデンサを直列に配置する必要があります。

コンデンサCY1の必要性は、一次側のスイッチングトランジスタによって引き起こされる電圧波形、および絶縁磁気の一次側と二次側との間の寄生静電容量によります(図9)。コンデンサCY1は、一次側のスイッチングFETのソースと絶縁磁気の二次巻線の端子との間に配置する必要があります。この後議論しますが、絶縁磁気の出力端子は、それらの間に大きな値バイパスコンデンサを有し、したがって同じ交流電位にあります。したがって、コンデンサCY1の出力端子はどちらの出力端子にも接続できます。CY1の静電容量の値は、電源の出力に同相電圧の許容可能な減衰を提供するために、一次~二次の寄生静電容量の値よりもかなり大きくなるように選択されます。なお、コンデンサCY1の値が大きいほど、電源の入力と出力との間により大きなAC漏出電流が生じるという悪影響があります。

図10:一次側のスイッチ、絶縁磁気、寄生静電容量
図10:一次側のスイッチ、絶縁磁気、寄生静電容量

入力バルクコンデンサ

この回路図のC1とラベル付けされたコンデンサは、DC-DCコンバータの入力を横切って直接配置され、AC-DC電源のブリッジ整流器(および存在する場合は力率補正回路)の後に配置されています。DC-DCコンバータでは、このコンデンサは入力電流トランジェントによる入力電圧の乱れを減衰する入力充電リザーバとして機能します。AC-DC電源でのこのコンデンサの目的は、整流されたAC入力電圧をフィルタリングし、AC入力電圧が除去されたときに出力電圧を維持するエネルギーを提供することです。前述の入力サージ電流制限レジスタは、このコンデンサが最初に充電されたときに流れる最大電流を制限するために使用されます。

出力のフィルタリング

電源の出力端子に配置されたフィルターコンポーネントは、EMIやEMCの問題に対処するために使用できますが、多くの場合、これらは負荷の近くに配置され、コンポーネントの値は、出力リップル電圧を負荷に対して許容できるレベルまで低減するために選択します。簡単に言うと、多くの電源アプリケーションではL1を短絡回路に置き換えます。前述のように、コンデンサC2は、電源出力端子間に低インピーダンスAC経路を提供し、したがってCY1を電源のいずれかの出力端子に接続することができます。

図11:出力フィルタ
図11:出力フィルタ

EMCコンポーネントの選択

電源に関連するEMIやEMCの問題を防ぐために適切なコンポーネントを選択することは、現時点では難しいことではありませんが、考慮すべき詳細が多くあります。多くの場合、コンポーネントとコンポーネントの値の最終的な選択は、性能、コスト、サイズ、電力変換効率間の妥協によっておこなわれます。CUIのような多くの電源ベンダーには、プロジェクトの過程で必要になった場合に、追加のサポートを提供するカスタマーサポート・エンジニアがいます。

カテゴリ: 基礎安全とコンプライアンス


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Bruce Rose

Bruce Rose

主席アプリケーションエンジニア

Bruce Rose は、エレクトロニクス業界で長年にわたり、設計、販売、マーケティングを担当し、アナログ回路と電力供給に重点を置いてきました。国際的なワークショップを開催し議長を務め、40以上の技術会議で論文の出版や発表をするなどの職務経験に加え、7件の特許を取得しています。Bruce は自分の仕事はもちろん、家族でハイキング、サイクリング、カヌーを楽しみ、また本格的な模型飛行機にも情熱を注いでいます。

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